BUSINESS ATHLETE FILE
美濃と和紙を元氣にする会社
丸重製紙企業組合 3代目理事長 辻 晃一さん
BUSINESS ATHLETE #1
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仕事におけるモチベーションとは何か
BUSINESS ATHLETE word
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他人にコントロールされるんじゃなくて、自分で生きて行けること=元氣
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人にはそれぞれ、使命・天命があり、それに出会った人間は、魂の底からモチベーションが湧いて来る。
ー先ずは、記念すべき第1回目のビジネスアスリートファイルのゲストになっていただきありがとうございます。
ビジネスアスリートって言葉いいですね。
アスリートって目的がはっきりしていて、やることが明確だから。ビジネスと共通する部分もありますよね。
ー辻さんは、元々家業が製紙会社ですよね?
最初は全く家業を継ぐ気が無くて。
まわりからは、「将来が楽でいいね」とか言われるのが嫌で、いつの頃からか「家業を継ぎたくない」と思っていました。
特に将来の目標も決まってなく、なんとなく東京の大学へ行こうかな….と、受験しましたが、ろくに勉強していなかったので、浪人決定。そこで、「どうせ大学へ行くならトップクラスの大学に行きたい」と思い、早稲田大学を受験を決意。当時、先生や周囲からは「早稲田は絶対に無理だ」と言われ猛勉強をはじめました。
ー絶対に無理だ、と言われる受験に挑戦したんですね?!
そうですね。何としても合格したい、という強い気持ちから、まずは勉強するための環境づくりとして実家を出て寮に入り、朝から晩まで勉強に集中しました。その結果、早稲田大学に合格。
この時に、目標を設定して努力する、ということを学びました。
ー大学の卒業を控え、明確にやりたいことが見つからず、なんとなく就職をすることに抵抗を感じた辻さんは、卒業後フリーターになり、アルバイトや趣味を楽しむ日々を過ごした。1年数ヶ月後、ようやくスタートした就職活動は、困難を極めたそうで…
新卒に該当しないってことで、面接がうまくいっても、ことごとく採用されませんでした。 会社の規定で、「フリーターは採用できない」という回答ばかり。面接担当者からは気にいって もらえても、経歴で不採用という日々が続きました。そんな中、名古屋のベンチャー企業が「うちはそういうの、問題ないから」と、即採用を決めてくれました。
ーどういった職種で採用されたんですか?
営業職ですね。翌年にはマザーズに上場を控えていた会社でしたが、そもそも最初は「上場ってなんですか?!」って面接に社長で聞いたぐらいの感じで入社しました(笑)。そしたら、「まあ、最初はそんな細かいことは気にしなくていいんだ」って(笑)入社した後も、研修とかあると思うじゃないですか?そしたら社長が「そんなもんないよ。とにかくお客さんの所へ行って来い。わからないことは、素直に教えてください、と言って、お客様に聞けばいいから」って。
ー仕事は現場で学ぶ、ということですよね。いい社長に出会われましたね。
そうですね。その会社で、まさにベンチャーの精神を学びましたね。その後、会社は東証1部にも上場し、営業マネージャーとして様々な経験を積みました。
ー数年勤務した会社を辞め、何か新しい事を始めようと思っていた辻さんは、自分が心からワクワクするような「モチベーション」が無い事に気がつきます。そんな折、実家のお父様から、「そろそろ家業を継がないか?」という連絡が入り…
うちの父親はどうやら、跡継ぎをあきらめたわけではなく、しばらく僕の好きなようにやらせて、色々外で学んで来い、というつもりだったみたいなんです。それで「そろそろ帰って来ないか」と。
最初は「和紙なんて儲からないじゃん…」(笑)と思って、ちょっと渋っていたんですけどね。もしかしてベンチャー出身の僕が地元に帰ったら、地域の光になるんじゃないか?!って、思えてきて。そう思ったら、もの凄くワクワクしてきたんですよ!
ー「生まれ育った故郷を元氣にしてやる!」と思われたんですね?!
そうですね。父親にも、和紙以外にも色々やるけど、いいか?と。とはいえ、和紙を無視するわけにはいかないので、「美濃と和紙を元氣にする」これをモチベーションにして、地元でリスタートしました。
ー辻さんの活動は、従来の和紙に携わってきた方々と異なることが多いですよね?
そもそも和紙自体が、産業としては衰退していて、まさに「絶滅危惧種」みたいなもんなんですよね。そういうものを売っていく、というときに、やはり攻めの営業、というスタイルでは通用しないわけですよ。
なので、僕はインターネットを使っての営業、主にSNSを使って、伝統的な和紙の営業とは違うやり方をしています。営業することに長い時間を割かない分、他のことで、美濃を盛り上げる活動をしています。
ー確かにSNSでの発信も含め、他の和紙業界の方とは違う動きをされていますよね?
自分はベンチャーでサービス業の営業をしていた経験があって、まさに製造業とは真逆なんですよね。サービスって形がないもの、目に見えないものだから軽いけど、製造業って重たい。でも重たいもの、というのは、すぐに真似しづらい。だから、その特性を生かして、こっちから動くんじゃなくて、人に来てもらおうと思ったんですよね。(丸重製紙では、会社の製造見学ツアーを実施中)それと、いま和紙業界が、全体的に川下に行く人たちが多い、と思ったので、それなら僕は川下じゃなくて、川上に行ってやろうと。
丸重製紙の製造見学ツアー風景
ー具体的にはどういう事を考えていらっしゃるんですか?
皆が川下に行こうとしている、というのは、具体的にいうと、製紙会社さんがたくさん展示会に出られたりして、紙をプロダクト化されているんですよね。なぜなら、川下にいる方が楽だから(笑)
でも、その川下は、既に飽和状態なんです。だったら僕は、和紙の原料となる楮の木を育てて、原料から製造したいなと思ったんです。そうなれば、自社で原料から調達できるし、他社さんにも販売できる。(楮は、和紙の原材料として、日本でも多く栽培されてきたが、和紙の需要減少や、生産者の高齢化等の問題で、国内での生産が激減している。)
ーそれは素晴らしい計画ですね!!
「美濃と和紙を元氣にする」という、僕のビジョンを考えたときに、「元氣」って具体的ってどういうことだろう?って、考えたんですよ。単純に声が大きくて明るい、というのも、元氣ってことだし。
でもそれじゃ抽象的すぎるな、じゃあ、なんだろうと。それで思ったのが、元氣=自立。他人にコントロールされるんじゃなくて、自分たちで生きることが元氣、ということなんじゃないか、と思ったんです。
ー最近、電力会社も設立されましたよね?!
※「みの市民エネルギー株式会社」は辻さん個人と、いずれも美濃市にある丸重製紙企業組合、タカイコーポレーション、小川電気商会、東京に本社がある「ワタミファーム&エナジー」の5者が各100万円を共同出資して、2017年9月に設立された。
そうですね。まずは、電気代というお金の地域循環を生みだし、その先に、地産地消、自分たちのことは、自分たちで、という考えが、元氣に繋がると思っていますので、電力会社の他に、観光業と農業にも携わっていて、現在は、美濃市観光協会の副会長もしています。 更に、2017年から耕作放棄地を利用してお米作りもスタートしました。
万が一、仕事が無くなっても、電気があって、食べる物があれば、生きていけるから、自立していられる。観光で外からお客さんが来れば、経済的にも発展する。色んなことをやっている様に見えていると思いますが、根源には「美濃と和紙を元氣にする」 というビジョンがあるから、全てやっていることは繋がっているんです。
ーものすごくエネルギッシュですが、そのパワーはどこからくるのでしょうか?
これはもう自分の「使命」だと思っています。人にはそれぞれ、「使命」とか「天命」があると思いますが、僕の場合はそれが、「美濃と和紙を元氣にする」ということだと思っています。
そういうものに出会うと、人は、魂の底からモチベーションが湧いて来るんですよね。
ーその他に計画されていることはありますか?
僕の好きなものに、和紙と同じくWがつくWINEがありますが、美濃市をWINEの世界的な生産地のような場所にしたい、という夢があります。
WINEの好きな人たちって、生産地や生産者を訪ねて観光したりするじゃないですか。和紙でも同じことができたらいいな、と思っています。
美濃に行けば、日本の和紙が楽しめる、美濃を「和紙の産地」から、「和紙の集積地」にして、世界中から、日本の和紙を触ったり、試したりする人が訪ねて来てくれたら嬉しいです。
そんなことを色んな場所で話していたら、大きな蔵のある地元の古民家をイノベーションする話が舞い込んできました(笑)。
ーますますお忙しいですが、まだ30代の辻さんには、たくさんやれる事がありそうですね。
美濃市は、人口の減少に伴い、学校が閉鎖されたりしています。
僕は、地域の発展に、教育は不可欠だと思っているので、学校を取り戻すことも、美濃を元氣にする一環として考えています。
ー辻さんのような方がいれば、日本の地方都市の未来は明るいですね。
これからは、やりたくない仕事は、全部AIにやってもらって、人はみんな、ワクワクすることをやっていけばいいと思うんですよ。人は、光に吸い寄せられるから、みんなが自立して元氣になって、そこに人が集まる。
だから僕は、美濃に世界中から人が集まるような場所にしたい、そう思って日々活動しています
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